労働災害を防止する80対20の法則
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パレートの法則ってなに?
パレートの法則は、全体の数値の大部分は、
全体を構成する要素の一部分が占めているという法則です。
パレートの法則をなるほどと実感させるのが、所得分布の経験則です。
つまり、全体の20%程度の高額所得者が社会全体の所得の約80%を占めているという現状です。
この法則は問題の本質をつかむのにとても有効な法則で、企業経営などにおいて、
思うように利益が上がらず、マンネリ化した事業の再構築に、選択と集中と称して使われてもいます。
マーケティングにあてはめると、全商品の上位20%が売上高の80%を占めるとか、
儲けの80%は20%の商品であるとかということです。
このパレートの法則は意外と誰もが納得できる経験的かつ実質的な法則です。
一方で、商品が売れるのは、多くの品揃えがあるから販売できるとの反論もありますが、
贅肉をとり筋肉質の体質にするには格好の法則です。
パレートの法則は品質管理に使用
パレートの法則を参考に考案されたパレート図は、
値が降順に示された棒グラフとその累積比率を同時に表すグラフですが、品質管理に使用されています。
QC7つ道具というのがありますが、
その手法の一つにあげられるのがパレート図による要因分析です。
つまり、横軸に不良要因の要素をとり、縦軸に件数、損失金額などの削減したい数値をとります。
そうすると、一部の発生要因が全体の多くを占めるということが多いのです。
図で示すようなAだとかBの不良要因に対して
改善を実施していけば殆どの不良を防止できるというわけです。
パレート図自体はパレートの法則とは関係なく、該当部分を改善すれば、
相当する部分が削減されるというごく当たり前の考えです。
しかし、ここで、言おうとしているのは、単なる当たり前としてではなく、
これらの数少ない要因が全体の件数の殆どを占めるということです。
つまり、物事は万遍なく発生するのではなく、偏って発生するということです。
難しい統計的計算は必要ありません。
いわゆる選択と集中で、一つひとつ問題を克服し、
日本の企業は品質を世界のNO1のレベルにしてきたわけです。
別の言い方をすれば、的を射た対策は効果を確実なものにすることができるということです。
この手法は、安全衛生活動にも当てはまります。事故災害が発生すると、災害の分析をします。
品質改善の場合と同じように、
10年間程の災害を型別(原因)に件数をまとめてパレート図にします。
そうすると自社特有の災害が見えてきます。ここに集中的に資源を投入していくわけです。
災害の型の原因を更に細かく分けると、自社の特徴がよりはっきりとしてきます。
そうすると、ぼやけて対策が講じられないこともなくなります。(パレート図フリーソフトで作成)
人生を変える80対20の法則
パレートの法則を更に進化させた法則に、リチャード・コッチの「80対20の法則」があります。
リチャード・コッチは「人生を変える80対20の法則」という書の中で、
「結果の80%は、原因の20%から生まれる。従って、常に重要な箇所は20%に過ぎず、
それを見極めて集中的に投入することが幸福をもたらす。」としています。
この理論を人生の教訓として、結果的に多くの富を手にしています。
また別の事例として、「あなたが成し遂げる仕事の80%は、費やした時間の20%から生まれる。
つまり、費やした時間の80%は、わずか20%の成果しか生まない。」、
「活動の80%は結果の20%しか生み出さないので、そうした活動はやめるのがいちばんいい。」、
「犯罪の80%を20%の犯罪者が占めている。」、
「交通事故の80%を20%のドライバーが占めている。」、
「離婚件数の80%を20%の人たちが占め、
この人たちが結婚と離婚を繰返しているため、離婚率が実体以上に高くなっている。」、
「教育上の資格の80%を20%の人たちが占めている。」等々、数多くの事象を例に挙げています。
災害についても、この法則が適用でき、「災害の80%は20%の原因から発生している。
この原因をつぶすことによって80%の災害を防止することができる。」
と言ったらいいすぎでしょうか。
また、「費やした災害防止対策の80%は20%の削減効果しか生んでいない。」
といったら言い過ぎでしょうか。
我々は20%の対策で80%の効果を発揮させなければなりません。
ここで求められるのが、いわゆる真の防止対策として求められる根本的対策です。
効果的教育を80対20の法則で
この法則は確かに多くの事象に当てはまる法則だと思う。
安全衛生教育についても80対20の法則を当てはめて考えることはできないでしょうか。
「日頃している教育の80%は、20%の効果しか上げていない。」としたら、
いくら一生懸命に教育をしても災害は減少しないということになります。
教育は万遍だらりではだめです。災害に対しては、原因分析をし、
本質を捉えた教育でなければ意味がありません。
そして、作業者の心に植えつけられる、効果的な教育でなければなりません。
リスクアセスメントでいう本質的対策・工学的対策の場合にはそれなりの効果が得られますが、
管理的対策における教育の場合には、遵守度がそのまま安全率に結び付きますから、
80対20の法則を常に頭に描いて教育をしていくことが重要です。
選択と集中で効果のある教育方法を取り入れることが必要です。
最後になりますが、若い時に単純な経験の理論でなく生き方の法則として
80対20の法則を自分のものとしていたら人生も大きく変わっていたのではないだろうか。
テニスにおいても勝因に結び付く技量は全技の20%であるなんて分かっていたら
もっとその技量を磨くよう集中的に練習をしていたのに。
投資に80対20の法則を取り入れていたなら巨万の富を手にしていたかもしれない。
高校入試・大学入試・資格試験など利用することも出来たかもしれない。
80対20の法則を信じるか信じないか、念頭に置いて生きるか生きないか、
まだまだ今後の人生に大きく影響するのではないでしょうか。
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