あり得るありえない?
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 パウル君が有名になりましたが。
  今年のワールドカップ期間中、ドイツの水族館で飼われているタコのパウル君が、 対戦国の国旗が入った容器の中に好物の貝を入れて置き、先に食べた方の国が勝つという方式で、 勝敗を予想したところ、すべて的中したということで全世界の話題の的となりました。 優勝国のスペインはパウル君を引きとりたいとの申し出を行ったとか。
 ちなみに、8回の勝敗を連続して的中する確率は、すべてが独立事象ですから、2分の1の8乗で、 256分の1となります。偶然が重なれば、起きない確率ではなく、起こり得る確率です。 ただ、不思議に思うのは、なぜこの時期にタコが話題になり、勝敗を的確にする事態となったのか、 何か仕掛けがあるのではと、半信半疑といったところが正直なところです。 おかしいと思っても、証拠がないのでどうしようもありまあせんが、タコのみぞ知る、 詮索する必要のない、罪のない遊びでしょうか。
神の手を持つと言われている人がいましたが。
  7月の新聞に、旧石器の認定ということで、10年前の考古学のねつ造事件に話が及んでいました。 内容は、10年前のねつ造事件の影響で、「人為的に作られた石器か、自然にわれた偽石器なのか」という論争が、 今も考古学の世界では続いているということでした。
 ねつ造事件とは、宮城県の県境を挟んで、数十キロ離れた地点から、破片の接合面が一致する土器が見つかったという発掘です。 私は、そのニュースを報じた新聞を見ると直に家内に、「破片が、場所を違えて存在する、そんなことはあり得ない。 それも、同じ人物が発掘に絡むことなんてありえない。」と言ったのを覚えています。 その後、この事件は、毎日新聞の北海道支社がプロジェクトチームを結成し、ねつ造事件としてスクープしています。 自ら埋めて掘り出す様子を証拠として写真に撮り、本人に見せたところ、ねつ造を認めているのです。 彼は、発掘そのものは確率的にはゼロでありませんが、どう考えてもあり得ない不可解と思われる発掘を次から次へと 数多くやっていました。神の手と言われた所以です。あり得ることかあり得ないことか、 可能性は確率で考えてみれば分かることです。しかし、このような例は、人間の直感で、判断できることではないでしょうか。 可能性があるかどうかという以前の天文学的数字な世界の話だからです。
確率の計算を知っていたら悪いことはできません。
  同じ人物の周りで死亡事故が続いて起きているという報道記事を目にすることがあります。 同一人物が2度死ぬことはありえませんが、同じ人物の周りで偶然に死者が出ることは、 低い確率ではあるが確率的にはあり得ることです。しかし、高額な保険金が掛けられていたり、 金銭に関係するトラブルが発生していたり、同じ死因であったりすると、発生する確率はどうなのでしょうか。 誰しもが、「起こりえないことが発生している」、「偶然にしてはおかしい」、と考えるのではないでしょうか。
 Aさんの近親者のBさん・Cさんが、交通事故死によって続けてなくなる確率を計算してみますと、 一年のうちにBさんが偶然に死ぬ確率は、一年の交通事後死者数4914人(平成21年度)を 日本の人口1億2583万人(平成21年10月1日推計値)で割った値となります。そして、 Aさんの近親者が30人とすれば、近親者が交通事故死で死亡する確率は、和集合となるので、 確率に30を掛けた値となります。そして、続いて次の年にもCさんが事故死に遭遇する確率は、 独立事象が続けて起きる確率なので、一年の交通事故死率に近親者数からBさんを引いた29人を掛けた値の確率の積となります。 これだけでも発生確率は格段に小さくなりますが、これに高額の保険金をかけている、事故内容が同一だとなると、 これらは独立事象なのでかけ合わせる必要がありますので確率はさらに小さくなります。 そして、3人目がなどとなると、更に小さい値となります。
 例を計算してみますと(保険金などはデータがありませんので考慮できませんが)
計算:交通事故死亡確率(0.00004)×30人×交通事故死亡確率(0.00004)×29人=0.0000014 のという小さな値になります。
 しかし、確率とはどこまでいっても確率として残りゼロとはなりません。 従って、犯罪を立証するには確率だけではできません。必要なのは証拠となります。
災害には3つの統計(確率)があります。
    安全の世界では、災害の発生を、「度数率」、「強度率」、あるいは「死傷年千人率」 という形で労働災害データを集計しており、この数値から自社の安全のレベルを知ることができます。
 「度数率」とは、100万延実労働時間当たりの労働災害の死傷者数 による災害発生頻度の指標で、実際の労働時間に即した死傷者数の比較ができます。
 「強度率」とは、1000延実働時間当たりの労働損失日数で、災害重傷度の指標で、 重大災害が多く発生すると率は高くなります。
 また、「死傷年千人率」とは、1年間の労働者1000人当たりに発生する死傷者数による災害発生頻度の指標で、 労働時間を計算していないので、労働時間の長短で差が生じますが、労働時間に極端なバラツキがない限り、 災害発生頻度の概略を把握するには有効です。
これらのデータは安全衛生情報センターが災害統計としてホームページに出していますので、 自社のデータと全国平均値を比較することができます。 また、中央労働災害防止協会が発行する「安全の指標」にも「死傷年千人率」などの産業別、事業規模別データが記載されています。 業種や規模によって率が違いますので、自社の業種、事業規模で比較することができます。
 全国平均より高い数値が続いていれば、 自社の安全レベルが低いということであり、急に数値が高くなっているならば何か問題が発生していると考えるべきです。 低ければ、一応の安全対策は全国レベル以上でありますが、更に改善を加えながら数値の低減化に努力を払えばよいと思います。 災害を減らすには、リスクアセスメント手法を利用するとともに、どういう事故災害が多く発生しているのかを分析することによって、改善すべき点を把握することができます。 つまり、類似災害が発生しているようであれば、まずは類似災害防止にポイントを絞って対策を講じるのも 有効な対処策となります。災害発生の確率をゼロとすることはできませんが、確率を大きく下げることは可能です。