災害は確率です
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今日の安全は明日の安全の保証ではないと言われるが。
ハインリッヒの330の法則があります。
330件の災害の中には災害には至らなかったが、300件の無傷災害(ヒヤリハット)、29件の軽傷災害、そして1件の重大災害が発生しているとしてハインリッヒが法則を唱えています。
このハインリッヒの法則を三角形で描いてみると、図のように示すことができます。一番下の台形部分が無傷災害、まんなかの台形部分が軽傷災害、そして、頂上の三角部分が重大災害です。これらの面積を件数として捉えることができます。
ところで、三角形の頂点にある重大災害は、いつ発生するかということですが、横の時間軸内であれば、この期間のどこで発生してもおかしくないということになります。つまり、三角形の頂点を、時間軸の中でどこに移動しようが、面積の変化はありません。したがって、今日発生するか、あるいは数年後に発生するかという問題であって、たまたま、まだ発生してないというのが正しい見方です。
災害を減少させるにはどうすればよいか。
災害を減少させるにはどうすればよいかということであるが、具体的な対策は別途述べるとして、図形から話を進めますと、重大災害や有傷災害の発生件数は、無傷災害がベースとなった確率の問題であるということが分かります。したがって、重大災害や有傷災害を減らすには、三角形の面積を小さくすることが必要です。それには、発生件数が多く災害には至らなかった無傷災害の面積を小さくすることです。そうすると、結果的に、軽傷災害、重大災害の割合が減少することになります。逆に言うと、無傷災害といえども放置しておいてはいてはいけないということです。根っこ叩けということです。
安全対策を講じているから、ここ一年は災害の発生が減少していており、安全レベルが高くなったとは必ずしも言えないのです。安全レベルの向上を判断するのは、無傷災害の減少も同様でなければ、安全レベルが向上したことにはなりません。無傷災害が従来と変わらず発生していれば、運よくここの一年発生が少なかったということなのです。
ヒヤリハット提出活動は危険に対する感性を向上させる。
無傷災害の他に、無傷災害の状態にまでもいかないが、軽傷災害や、重大災害につながる可能性のある「不安全な状態」や「不安全な行為」は300をはるかに超えた件数があるはずです。また、無傷災害が現実に発生しているのに顕在化していないという問題もあるはずです。これらの潜在化していた無傷災害や、報告の対象となっていなかった不安全な状態や不安全な行為の経験の報告制度として、ヒヤリハット提出活動があります。これにより、管理者が気づいていなかった危険要因を吸い上げることができます。そして、経験体験した事象を記入することによって危険に対する感性を向上させることができます。災害の少ない企業では、ヒヤリハット提出活動が盛んで件数も非常に多いのです。そういう意味では、手間いらずの安全対策と言えるでしょう。内容を簡単にして記入し易くし、誰でも気負わずに書ける、そんな配慮が提出件数をアップさせます。もちろん、発生した有傷事故には徹底した対策を実施することは忘れてはなりません。災害に至る原因は一つの原因だけでは起きません。種々の原因が重なり合って発生しますので、4M手法などを利用して、徹底して根っこにある問題にも対策をとらなければなりません。
共同作業はなぜ災害が多いのか。
共同作業は、計装システムの信頼性でいうところの直列系の信頼度と考えることができます。
直列系の信頼度とは、右図のようなシステムであり、A・B・Cのどれかが故障すると、
システムはダウンするというものです。
共同作業はこの形と同じであると考えることができます。例えば、多少乱暴かもしれませんが、
3人で有害性液体の入った容器を持ち上げる仕事をしたとすると、
A・B・Cの3人うち1人でも手を離す事態が起きると、容器は落下して液体が飛散し、薬傷します。
一人が安全に持ち上げる確率を90%とすると、全体の安全率は0.9×0.9×0.9=0.729となります。
作業にもよりますが、係る人数が少ない方が安全であることが分かります。
この式で示すように、共同作業は、作業に携わる人が多い程、安全率は低下します。
人が係る作業で、直列系の信頼度と考えられる系では、合図の統一、意思の確認、作業の引き継ぎなど十分な対策が必要となります。
一方、並列系の信頼度の安全対策とはどんな例が挙げられるのでしょうか。前にも述べましたが、
これには、燃焼の3条件を例として挙げることができます。
3つの条件がすべて揃わなければ燃焼は起きません。つまり、@酸素があること、
A燃えるものがあること、B火源があることです。これは、並列系の信頼度で安全率を考える
ことができます。これらの、対策を別々に講じるとどうなるでしょうか。
@の対策を90%の安全率で実施する。ABを実施しないとすると、90%の安全率です。A
を追加すると99%となります。Bも追加すると、99.9%となります。
並列系の信頼度では対策が多いほど効果が大きいということになります。
以上の直列系と並列系の信頼度の考え方を利用することによって、施した安全対策の程度を、
エイヤーの世界ではあるが、推定することができます。
(※考え方に間違い等、ありましたらご指摘ください。)
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