高機能化がどんどん進んでいますが
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 設置して十数年経過した、シャワートイレが壊れた。修理をしようと思ったが、 もう部品がないということである。 PL法では、引き渡してから10年は製造物の責任を問われるが、 10年過ぎたら責任を問われることはないので、部品は持たなくて良いということなのであろう。 故障部分は、赤外線によって本体の操作指示を出す部分である。 後ろ向きになれば、手動で水もシャワーも流すことはできるが、便利がすこぶる悪い。 シャワートイレ本来の機能はなんとか発揮しているが、便利さは半減した。 操作性を元通りに復元しようとすれば、丸ごと本体を交換するしかない。 陶器部分はびくともしていないのであるが、交換部品は10年しか保有しないという現実である。 機能化が進み、一部の不具合な部分が全体としての機能を不全にしているのである。
 世の中、確かにガラパゴス化がどんどん進み、機能が複雑になってきている。 機能には製品の本質から必ず必要なものと、あれば、便利のいいものの二通りがある。 あればいいものの殆どは、一部に人にとっては効果があるかもしれないが、 大多数にとっては無用の長物である。 困るのは、高機能化、一体化がどんどん進み、一つの機能が故障すると、 すべての機能が失われるといことである。 便座にシャワーが付いたものであれば、簡単に取りかえることができる。 便座を消耗品と考えることができても、便器部分は半永久的に使えるもので、 消費者が不都合を感じた場合に取り換えれば事足りるのである。
 高機能化は、シャワートイレの他にも沢山ある。 一例をあげれば、プリンターとスキャナーの複合機である。 プリンターは壊れやすく、素人では修理でないので費用もかかる。 複合機という便利さではあるが、スキャナーとプリンターのような場合は、 トイレと同様、別々に購入しても、機能的には何ら問題はない。 便利さ(機能の多さ)と相反する結果である。 プリンターの買い替え時には、複合機は差し控え、 単一機能のプリンターを購入したいと思っているが。
 通勤中に携帯電話のカメラで女性のスカート内を盗撮したとして、 千葉県警船橋署が、同県迷惑防止条例違反の現行犯で、 ○○建設管理本部総務・法務部長(56)を逮捕したと2月26日のニュースで報じていた。 容疑者の逮捕容疑は同日の午前8時5分ごろ、 船橋市西船のJR西船橋駅構内の上りエスカレーターで カメラ付き携帯電話を使って前方に立っていた女性会社員(51)の スカート内を動画で撮影したという容疑である。 不審な動作をしていた容疑者を警戒中の鉄道警察隊員が目撃し取り押さえたが、 携帯電話には盗撮した動画のデータが残されていたと報じられている。 携帯電話が写真機能や動画機能を備えておらず、 ビデオカメラで撮影ということであれば実行しようにも出来ない相談であったと思う。 この種の、犯罪は後をたたない。 まさに、氷山の一角であり、また、機能のもたらすいじわるさかもしれない。 機能犯罪は増加の一途をたどっている。
 設備は必要な機能だけ備えていれば、事足りるのであるが、どんどん高機能化が進んでいる。 我々の年代には、本来必要な機能だけで満足する者が多いのではないかと思う。 消費者として、製品を購入する場合に、 高機能に魅力を感じさせられることなく自分が欲しい機能は何かを はっきり確認しておくことが必要である。 あればいい機能、付属しているけれど使わない機能が次々と付加され、 どんどん製品価格は上がる(下がらないというのが正しいか)のである。 私の思うところ「製品は購入した時からは廃棄物」である。 製品は壊れ、そして廃棄される運命にあるが、 可能な限り長く使用しようという認識を持って購入する必要がある。 ひとつの機能が壊れても、交換により製品全体が機能を果たすことができるのか、 取り換えが効くのかということである。シンプルイズベストと言いたい。
 ところで、安全の世界について考えると、機能はずいぶん役立っている。 ヒューマンエラーによる災害は、人間との関わりが多いほど、そして複雑であるほど多く発生する。 そういう意味では、人間の関与を出来るだけ少なくし、 複雑なものはシステム化して間違いが少なくすることが安全上は求められる。 機能によるシステム化は労働災害を減少させる効果があるといえる。 しかし、その反面、機械設備の中はどんどんブラックボックス化が進み、 それに伴って、使っているつもりが、機能に使われている現実が出現しているのである。 機能を操っているようで、機能に操られた人間が増加しているのである。 若い人は、電話などの機能に対しては、高年齢者に比べると随分長けている。 PCも飲み込みが早く、打ち込み速度も高齢者に比べると格段に速い。 だが、高齢者には、機械設備についていけない人が多く発生している。 そういう意味では、高齢者泣かせの機能化の進展である。