理屈と膏薬はどこにでもつく
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 理屈を辞書で引いてみますと、@物事の筋道。Aこじつけの理由。 現実を無視した条理とある。@の方は理由づけのいい意味で、 Aの方は理由づけの好まれない意味で使われているかと思う。 Aについての例について考えてみたいと思います。
 毎日コメンテーターと称して、同じ人物がテレビに出演して、 キャスターからの質問に評論を加えています。中には人を馬鹿にしたような、 おかしなメガネや帽子をかぶり、多種多様な評論をしているコメンテーターもいます。 世の中には専門家という方がいると思うのですが、 どんな話題にも見事に専門家になりきってコメントをしているのです。 いつの間にか、キャスターとコメンテーターの巧みな話術の中にはまり、 一刀両断に、ばっさばっさと切り捨てる歯切れの良さに感嘆し、 本当に頭が下がる思いでいっぱいです。 一方、好き勝手なことを言うあなたの品格はどうなのですかとも言いたいところですが、 品位など別に論ずる必要はないのです。 コメンテーター自身が夢中になって論じている品格のなさこそが、 彼の個性であるからです。こういうコメンテーターだから出してもらえるのです。 これらのコメンテーター、理屈こきのかわいそうなピエロかもしれない。
 規制値の交渉をしたときのことを人から聞いたことがあります。 交渉の時にはとにかくあれこれと理由を並べなければいけない。 よくもまあ理由を並べ立てたものだと思うくらいに。 その人曰く、屁理屈でもいいから言わなきゃいけない。 不都合なことを針小棒大に書き並べなきゃいけないと。
 またこんなことも、届け出書に何も理由を書かずにお願いしますと言えば、 これでは受け取れないと言うが、何か書いてあれば安心する。 つまり、担当者は、見てないと言われることは困るので、 字の間違い、計算間違い、書式の間違いは見て訂正しても、 理由については適当な理由を記載しておけば納得してくれるのです。 屁理屈であっても正当な理由として取り上げてくれるのです。 ちょっと嘘っぽいかなと思っても、ちゃんとした反論をするのは相当の見識がなければできない。 そういう意味では、世の中の理由の多くは屁理屈と分かっていても、 屁理屈と言えない所以かもしれない。
 確かに、理屈に反論するには多くのエネルギーがいる。 特にメールの場合は先に問題を投げかけた方にエネルギーが少なくて済む。 問題に対して反論するには、屁理屈でも言えばいいというわけにはいかず、 理路整然とした説明が必要で、莫大なエネルギーを必要とするのだ。 そのため、人は寡黙になったりもします。 上司からの言動、理不尽だと分かっていても、上司を説得するにはエネルギーが多くいるからです。
    中には、公の場でまともに応えない回答もあります。 最近は、パブリックコメントがインターネットで募集され、 回答が示されるが、質問に対して、真っ向から返答していない事例が多く、 肩透かしを食らったような回答が多い。 この種の意見聴取は形だけであって、 意見は聞きましたという返事だと理解するしかないと思えてしょうがない。 個人的な意見はまず受け付けられないと考えておくべきです。 筋?いや道を通して事を進めなければならないのでしょう。
 理屈はどこにでもくっつきますが、膏薬もよくくっつきます。 膏薬といえば、「タコの吸い出し」昔は衛生状態も悪く、子どもには「おでき」がよく出来ていた。 おできが腫れ上がって先っぽが膿で黄色くなると   「タコの吸い出し」を患部に塗って膿を吸い出したものです。 膿が吸い出されれば、痛みもとれ、あとは腫れの引くのを待つだけです。 「たこの吸い出し」と同じように効くのが、どくだみ草です。 ドクダミの葉を銀紙などに包んで七輪で蒸し焼きにして、 ねちねちになったらおできの上に塗ったものです。 今、年を重ねてきてお世話になっているのが、 サロンパスとかトクホンで筋肉痛を和らげる膏薬です。 これからこれらの膏薬とは長い付き合いをさせて貰う運命かもしれない。
 理屈と膏薬はどこにでもつくという諺があります。 膏薬が体のどこにでもつけられるように、 どんなことにでももっともらしい理屈をつけられるということです。 しかし、貼って効くのはこう薬だけです。
 貼って効くものに、安全のシールやポスターや注意書きがあります。 ですが、これらは貼っただけでは効果が十分とはいえません。 周知という意味合いからは、貼らないよりは、貼った方が効果的です。 しかし、べたべた貼っただけの掲示物、見苦しい上に意外と効果は薄いのです。 それは、掲示物に効能があるのではなくて、掲示物を受け取る側に問題が存在するからです。 インパクトを与える、考えさせる効能がなければ、掲示物はただの紙切れに過ぎないのです。 そういう意味では、貼るだけで効くのは膏薬だけかもしれません。 掲示物を膏薬にするには、見る目を育てる教育も安全教育が重要なことです。
 蛇足:膏薬と名がついても、内股膏薬は意味合いが違います。 これは、内股にはった膏薬が右側についたり左側についたりするところから、 しっかりした意見や主張がなく、 都合しだいで立場を変えたりするあてにできない人物のことをいいます。