目から消えるものは心からも消える
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2001年の8月7日のことでしだが、美空ひばりの13回忌の特集をやっていました。「私の美空ひばり物語」という番組でしたが、美空ひばりの歌を流しながら、故人と関係の深い人が出演して、それぞれが想いを語っていました。出演したのは高橋英樹・北大路欣也・奈良岡朋子でした。高橋英樹、北大路欣也は何を言ったか憶えていませんが、奈良岡朋子の話は印象に残りました。と言うのは、私も旅が好きで、今でもよく旅行をすることがありますので、「旅」ということばがキーワードで、鮮明に記憶しているものと思います。
内容は「果たせなかった二人旅」と言うことでした。奈良岡朋子は旅が好きで、舞台などが空いたときは一人でふらっと旅にでるということですが、その話を美空ひばりにしたら、私も連れってくださいとうことです。でも、私の旅は軽装で、バックひとつで、誰とも分からないような格好で、気ままな旅、それでもいい。美空ひばりは元気になったら、ぜひ私も行って見たいということでした。美空ひばりは、バックを購入し、奈良岡朋子との旅に備えていたというということです。しかし、美空ひばりは、病魔に冒されていたので、その願いもむなしく、亡くなったということです。
その話の中で、奈良岡朋子は、「目から消えるものは心からも消える」という諺があるが、「私のひばりさんは、目から去っても、心から去らないひと」と言っていました。美空ひばりのような特別な人は別として、一般的には、諺にあるように視覚から消えると、物事は忘却されてしまうということかと思います。本当に思い出があるんだなあと思いました。実は、この諺を知りませんでした。視覚にあるということが、心にある、つまり、脳裏にあるということで、視覚と記憶とは非常に密接であるのです。
人間は五感を持っています。五感とは目による視覚、鼻による嗅覚、舌による味覚、耳による聴覚、皮膚等による触覚であります。ものの本によりますと、情報を得る場合、視覚から87%、嗅覚から7%、味覚から1%、聴覚から7%、触覚から1.5%と言われております。圧倒的に視覚からの情報が多いわけです。この様に視覚からの情報が一番多いわけですから、視覚を利用して情報を伝えることをやっていると思います。注意表示等による表示はその例で、それなりの効果があると思います。しかし、これが悪いとは言いませんが、表示をしておけば、メモを渡しておけば、それで物事、事足りるわけではありません。
面白い、興味深い実験結果があります。安全のひろばか何かに出ていたことですが、それによりますと、座学などで事柄を話しただけでは、3時間後には、70%、3日後は10%、3週間後は4%しか覚えていないそうです。これを、書いたものを見せただけでも同じく、3時間後は72%、3日後は20%、3週間後は8%しか覚えていないそうです。ところが、書いたものを見せながら、話すと3時間後は85%、3日後は65%、3週間後は54%という実験結果があるそうです。
忘れてもらってよいことは、話すだけでよいわけですが、忘れてもらって困ることは、書いたものを見せながら話すことがもっとも効果的な情報伝達の方法です。教育をしたが、どうも効果が思うようにあがらない。そんなことがあるのではないでしょうか。繰り返し教育することは忘れ防止をする上で勿論重要ですが、やり方にも工夫が必要なわけです。作業標準書はみて貰いながら説明をする。こんなことが必要なわけです。しかも相手の脳裏に刻まれるようにスピードの配分も重要です。適度な速さで、理解を得ながら説明することが必要です。話が一方的では効果がありません。これに、議論等を加えるとさらに効果が上がります。聞き上手は話上手とも言います。ヘレンケラーのような3重苦の天才もいますが、一般人は以上のことがあたっているのではないでしょうか。
人間は忘れやすい、だから、一生懸命に憶えようとします。憶えたら、引出しに仕舞っておくのではなく出して使う必要があります。優秀な作業者はこれらがうまいわけです。ついうっかり、知らなかった、忘れたがないように脳裏に叩きこんだら使うことが必要です。冒頭に書きましたが、「目から消えるものは心からも消える」と言いますが、視覚から消えていても心の目には残るようにしなければ安全には効果がありません。その点、視覚に訴えるビジュアル教育は教育効果を生む上で重要な手段かと思います。
私も美空ひばりが好きです。カラオケでは、時々、美空ひばりを歌います。小学5年のころに流行った「港町十三番地」ですが、「川の流れのように」も何時かは歌ってみたいと思っています。(2002年3月記)
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