お客様目線
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  平成21年、高速道路を利用して、シルバーウイークの旅行からの帰路、渋滞情報が各地で出ていたので、渋滞を避けるため、仮眠を先にとった。その後、運転を始めたが、先でも渋滞が予想されたので、早めに燃料(軽油)をいれることにした。ガス欠にならないようにとの思いから、燃料を入れることにした。従業員が燃料を入れるのを、運転席からバックミラー越しにみていると、蒸気のようなものが車の給油口から出ていた。燃料タンクでも温まっているのか、何か異常があったのか、など思いながら様子を見ていた。また、多少時間がかかりすぎるなあとも思った。給油が終わると、従業員が6830円ですといって、請求書をもってきた。1万円札を出したあとで、すぐに、従業員に対して言った。「そんなにつげるわけないですよ。おかしいんじゃあないですか。この車のタンクは60リットル(後でしらべたら65リットル)ですよ。燃料メーターからみても、いくら入っても45リットルですよ。」いつもになく興奮してクレームをつけた。63.8リットルの請求である。高速での渋滞があったので、早め早めの給油である。どう考えてもこんなに入るわけがない。明らかに異常値である。従業員は、「でも、メーターが、このとおり6830円を示しています」との返答である。
 「責任者を呼んで下さい。」 夜中の3時半であるから、責任者といっても、年恰好からすると、30歳前と思われる従業員であった。給油を担当した従業員は、「お客さんが6830円も入らないと言われています。」ただ、従業員は、「給油の途中でエアーを噛んで居ました」と責任者に言った。そうすると、責任者は、「おそらく、エアーを噛んで給油メーターが余分に回転したものと思われます。地下タンクの容量が少なくなり、エアーを噛むとこのようなことが起きます、申し訳ありません。お客さん料金を減額します」と言って、何やら計算を始めた。「お客さん、5500円です」といって、4500円おつりを返してくれた。計算すると、リッター107円だから、51リットルの給油となる。どういう計算でこうなったのか。「燃料メーターからすると、40リットルぐらいですよ」といったが、返事がない。あった事実を、書くように要求した。責任者では解決できないと判断したからだ。責任者は、「ちょっと待って下さい」といって、事務所に引っ込んだ。事務所に顔を出すと、「明日、所長が電話をします」とのことであった。この場で、いくら文句をいってらちがあかないと思い、携帯電話の番号を連絡して、帰路についた。
 朝、自宅に戻って、インターネットで最後に給油した場所からの走行距離を調べると、420kmであった。リッター10kmとして、42リットルの計算である。入れ方によっては、もう少し多く入るかもしれない。しかし、支払った51リットル分は、誤差範囲とは言い難く、明らかに支払い金額が多すぎる。超過金額は1000円足らずだが、このまま泣き寝入りするには、いかにも残念だ。消費者庁、それとも、本社へのクレームか、などが頭に浮かんだ。
 そうこうしているうちに、所長から電話があった。「申し訳ございません。お客様の車の燃料タンクであれば、50リットルぐらいですよね。65リットルも入るわけはありません。計器不良で、すぐに使用を停止として、修理に出しました。信用問題にもなりますので。私の従業員への教育が足りませんで、お客様に不愉快な思いをさせて申し訳ありません。給油料金の方は、こちらの不手際ですから、全額返金させていただきます」と。
 翌日、銀行口座への入金を調べると、42リットルぐらいを考えられるので、差額だけで結構ですとの返事はしていたが、5500円が送金してあった。「申し訳ありません、全額返金してもらって」とお礼の言葉をのべると、「また、遠出をされた折は、当スタンドへよって下さい。お待ちしています。」と有難い返す言葉があった。「責任者をあまり叱らないでくださいよ」と、付け加えるのを忘れたが、自分の責任と捉えているのでまあ大丈夫だろうと思う。
 責任者は自分の立場のことしか考えていないが、所長はより広い視野で考えていた。6830円は、個人にとっては大きな金額であるが、企業にとっては、クレーム、信用などを考えると安いものだ。責任者はこのような判断はできなかった。お金の穴をあけないように、このこと一点だったのではないのだろうか。消費者庁にでも連絡すれば、このようなことでも、前後での給油者に対して、情報公開をして、発信しなければならない。莫大な損失が待ち受けている。
 もうひとつ、思い出すことがある。十数年前のことであるが、中部地方のメーカーの食品をスーパーで購入した。その食品を口に運んでかんだときのことである。異物があり、唇が切れて、病院に行った。状況をお客様相談室に連絡したら、異物を送ってほしいとのことで、送付した。数日経過して、本社と支店から2名、自宅を訪ねてきた。公的機関で、弊社で使用している、透明物質と異物を調べましたが、一致するものはありませんでした。チャートを見せて、一致する設備がないことを説明した。混入先は特定できませんが、今後品質管理には万全を期しますとかいって説明をうけた記憶がある。商品の詰め合わせと、1万円の商品券を差し出された。説明はどうもしっくりこなかったと記憶している。後で思ったが、異物は透明でメガネのレンズの破片のようだった。設備でなく、従業員が身につけていたものを、原料中に落としたのではないか、本気でしらべたのだろうか、クレーマーのように思われたのではないだろうか。サンプルは手元にすでになく、それ以上の言及はさけた。
 また、その当時は、会社にも在籍しており、あまり、公的機関を通じてクレームをつけたくないという気もあり、それ以上の言及はしなかった。それに、唇の傷も癒えており、半分忘れかけていたこともあった。文句を言う人の中には、クレーマーもいるので、すべての、お客に対して、一様の扱いはできないかもしれない。しかし、外装に破れはなく、明らかに、その食品の中に入っていた。それは、自分自身が一番よく知っている。相手の目を見て話をすれば、真実か、真実でないかは、客扱いがたけた人なら分かるはずである。ひょっとすると、他からも同じクレームがあったのではないだろうか。今のご時世ならば、安全策をとり、即、商品回収である。原因がわかりませんで、終わっていれば、対策のとりようがない。おそらくクレーマー扱いにされたのではないかと、今になっては思うところである。
 先の場合は、管理者が、教育不十分と、設備の管理を問題としていたので、教育を十分行い、設備点検、給油のマニュアルを拡充すれば、今後は起きないであろう。
 しかし、後者の場合は、原因が分からずじまいで、設備が原因ではありませんとして、他の原因を検討していないので、対策は不十分で終わっている。また、発生しているかもしれない。
 クレーム対応は、お客様目線か、それとも、自分目線、企業目線かで対応が異なる。しかし、目線を間違い、対策が不十分であれば、いずれは、大きなしっぺ返しがくるのではないであろうか。